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理事長所信

社団法人 中条青年会議所
2011年度理事長
阿部 健

<はじめに>
 何故私は此処、社団法人中条青年会議所にいるのだろうと振返ってみました。
 誰でも一度はあるかもしれません。雑誌やTVなどの影響力、都会への憧れもあったのでしょう。高校を卒業後、自然が多過ぎるこの地域に嫌気が差し、住み慣れた地域を飛び出しました。しかし今改めて振返って考えると、物心付いた頃から“家業を継がなければならない”という立場上、故郷に絶対帰らなければならないという自分の中での勝手な犠牲感を抱きながら、決められたレールの上を走っているような気分で「どうせ帰るのだから」と、安易な人生観を持って生活していた自立心がない私がいました。紛れもない、それは私の中の保険であったのではと感じます。

 そして時が過ぎ、故郷胎内市に帰ってきました。まもなく多くの先輩方々に“中条JCに入ってみないか”と誘っていただきました。「時間が無い」とか「忙しい」などと、なんだかんだ理由を付けて入会を拒んでいましたが、2003年ついに入会しました。当時はJCに全く興味がなく、委員会メンバーなど名だけでした。どのような事業をしているのかさえ理解しない、理解しようとも思わない私がそこにいました。青年会議所には「修練・奉仕・友情」という3信条がありますが、自身の行動は恥ずかしいほどの有様でした。あるとき先輩に、「JCバッチ付けてないね」と指摘されました。私はJCマンである象徴のバッチまで無くしていたのです。先輩は「頼んでおくよ。」と言ってくれましたが、それから数ヶ月たっても手元にバッチが届くことはありませんでした。痺れを切らし私の方からまだ届かないか尋ねても、もう少しだよというばかり…。とうとう年が明け、京都会議の時期となりました。JCバッチがどうなったのか忘れかけていた頃です。京都会議帰郷後、先輩はわざわざ家までお土産を届けてくれました。色々な頂き物をしましたが、その中の片隅に小さな小箱があり、開けてみるとJCバッチでした。 〜何故なんだろう、どうしてそんなふうにできるのだろう〜 皆さんに幾度となく声をかけて頂いても事業に参加する意欲の無かった私に、それでも手を差し伸べてくれる先輩達がいました。私にとってこの出来事がそれはJCという団体に所属していたことによって手に入れることのできた、自分自身の殻を打破る「きっかけ」であったのです。“自分のことで精一杯、忙しいなかでそんな面倒なことは協力できない”そんな風にしか考えることが出来なかった私が、此処でメンバーと一緒になって何かできることがあるのだろうか、私が迷った時は皆から意見を仰ぐ、その繰り返しでやってみようといった意向と自覚、そして「修練」を通じて目標が無ければ得ることが出来ない。大きく人生観が変わる「きっかけ」をつかむことができました。

 この地域が私の故郷である事以外、特別なことを考えたことなどありませんでしたが、入会から多くの時間が経過し、今改めて「この地域こそ最愛の場所」と感じ、心の奥底に眠っていた自身の純粋な郷土への想い、そして志を同じくするメンバーとの「出会い」この運命ともいえる「出会い」を私自身深く受止め、道場にも例えられるJCで絆を深め、『地域社会における青年らしい実践とは何なのか』を皆さんと共に考えたいと思います。

 初代より数え32年目を迎える中条JCの伝統は、多くの先輩方の礎(いしずえ)が受け継がれてきたものです。この継承を大切にしながら創造し、新たな革新に繋げて行く事が、今すべき我々中条JCの存在と考えます。革新に向かって突き進む努力、そして我々が目標を持って事業に専念することによって、そこから希望にかわり、自己の知りえない個性が発揮されることに繋がるのではないでしょうか。我々がこの地域に必要とされる団体であるのかどうかは『我々の目標』であって、市民の方々の望みであると断言はできませんが、何をするにおいても今この時以外に自分の人生は無いのだから『明るく豊かな社会への継承そして革新』を目標とし事業を邁進して行きましょう。

<人間力>
 連日のように報道される虐待や自己責任の無い親が未だ多く存在する世の中、このようなことが繰返されぬよう未来の担い手の育成をどのような志向で行ったらよいのか。どの国でも状況は似た様なものではないかと感じています。“愛する”とはどういうことなのでしょうか。相手の良いところに関心を持とうとする心がけ、相手を責める気持ちをいくらかでも無くそうとする状態、このようなこともそうではないかと思いますが、わが子は、わが生命のわかれです。

 本年度の中条JCでは、伝統のわんぱく相撲をはじめ、青少年育成事業に取り組み、地域の担い手の育成を子供達だけではなく、親も一緒になって生きる力を考える事業を推し進めたいと考えます。我々にとってもこのような経験が、自分のまだ知りえぬ心の扉を開け、新たなる自分の価値を発見し、良い伝統の中から更に良いものを生みだしていく、『継承し革新』へと目標を持ち実行することが重要です。

<地域力>
 我々の住む胎内市の魅力とは、城下町である村上・新発田の両市に挟まれた場所に位置しており、日本海・櫛形山脈・そして母なる川、「胎内川」と、恵まれた自然環境、そして古くから天然ガスや自然エネルギーの産業を取り入れた中核工業地帯でもあるこの地域は、素晴らしい魅力にあふれる地域に間違いないでしょう。

 新しくてよいものは誰でも望みますが、原点に帰り歴史ある中条JCの事業を検証し、新たなスタートを切る、先人達がこの地域に捧げた思いを議論しながら原点に戻り改めて前進していくと共に、伝統や歴史を再確認し、ともに共有することによって形や目に見えるもの以外の姿が隠されていることに気付けるのでしょう。本当の「地域愛」とは何かを検証し、そして行動に移し、『継承し革新』へと志を高く持ち、活動していくことが必要です。

<公益法人制度改革・会員拡大>
 社団法人中条青年会議所も、昨年からの引継ぎである公益法人制度改革の実現を目指すと共に、会員拡大についても、2011年の卒業時には現在の3割以上のメンバーがいなくなってしまう現実を受け止め、私達の意志の継承を行うことの大事さを忘れず、供に行動してくれる仲間を増やすことについて、重大な時を迎えているということを各々が心に持ち、この課題に一丸となって立ち向かう必要があります。

<おわりに>
 私達は、JC宣言の言葉にある「混沌」という先の見えない時代に直面しています。報道では“かつて無い・過去に経験の無い時代”など、様々な言葉で叫ばれています。

 しかしこの国は、幕末の黒船来航や昭和の各大戦での敗北、そして平成の大不況。どの時代でも幾度となく復活し、敗戦当時の状況などは、この時代以上の過酷な試練を私達の先人は経験し、その都度対応しながら今日へと「時代の継承」に至っているのではないでしょうか。

 “何故私は此処にいるのだろう”このような言葉を冒頭に投げかけましたが、振返り改めて社団法人中条青年会議所にいることができた事が私の運命であり、この今の時代に生かさせていただいている事も、私の「今」であり運命であると考えます。答えのある未来や地域などありえません。我々はこの危機的な状況を真摯に受止め、先人達がやってのけてきた様に、明日への担い手へと継承しなければなりません。

 一点に集中せず、己自身がより立派になり、より成長することを前提に置き、各々が「地域を発展させよう」・「国家を発展させよう」・「人類繁栄の基石」となるという使命感を自覚し、自分自身が向上し前進することを想い、「ひとのため、世の中に役立つため」、これこそが「青年らしい実践・地域貢献」と考え、大胆に青年らしい活動を供に行って参りましょう。

継承し 革新する


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